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会津若松機関区とC11。

会津若松機関区は只見線の立役者C11を完璧に整備する頼もしい施設でした。

ターンテーブルに乗るC11を見守る構内作業員。会津若松にはD51も乗る大型の下路式ターンテーブルが設置されていました。ただしターンテーブルと周囲のレールとの段差は、通常のレールジョイントの平滑さとは比較にならないほどでしたので、静々と慎重に乗り入れるのでした。只見線のC11は線区が長く、勾配もあったので炭庫を屋根高さまで嵩上げした重々しいリアビューをしています。このターンテーブルは電動式で、中央に櫓が立ち、そのてっぺんに回転式の受電装置が見えます。近くにはトランスを乗せた頑丈な電柱が建って、ターンテーブルを駆動するモーターに電気を供給していました。ターンテーブルは万一の停電に備えて、機関車のエアーでも回転させられる補助装置も備えていました。

傑作タンク機関車・C11のサイドビュー。水タンクが大型化され、水タンクに揺れ止の梁を持つ後期型です。C11型は本来は短距離の区間列車などに使用する目的で開発されましたが、蒸気機関車の終焉期には全国のローカル線に配属されていました。太平洋戦争で距離の長いローカル線向けに製造されていたC56型の大半が戦地に送られ、ローカル線の機関車が不足したのも原因のひとつです。デビュー当時は東海道本線区間列車や、C53の引く特急ツバメの京都米原間の後部補機にも使われた万能機でした。その折は逆向き後部補機でしたから、ツバメの展望車の乗客は押しまくるC11のリアビューを眺めたのでしょう。あえて逆向きとしたのは、従台車がボギー構造で高速運転向きだったからだと思われます。2軸の従台車を持っていても、C61のように従台車の上に火室が乗っていたのではなく、第2動輪と第3動輪の間に縦長の火室を落とし込んだ構造です。これは日本の蒸気機関車史上、最高の傑作のひとつであった8620の流れで、8620を近代化し、短距離向きタンク機関車としたのがC11だとも言えます。

C11のキャブ。D51などのテンダー機と異なり、言葉通りの密閉キャブです。冬場は快適で乗務員にも好評でした。C61などテンダー機関車にも密閉キャブと呼ばれる運転室はありますが、テンダー機関車の密閉キャブは、機関助士が投炭する際に、キャブとテンダー間の渡り板で作業しないという構造で、キャブの後ろ妻板には開口があったので、C11ほどの快適性は望むべくないというのが実情でした。

機関庫内でC11がボイラーの煙管から煤を掻き出して貰っています。火室で燃焼した石炭の燃焼ガスはボイラー内の煙管と呼ばれるパイプを通り、湯を沸かしながら煙突下の煙室に導かれますから、煙管には当たり前のように煤が溜まり熱効率が下がります。ですから定期的に煙室扉を開け、長い煤の掻き出し棒で煙管を掃除していたのでした。

ピストンバルブを引き抜いて整備中のC11、キャブの脇には熔接用のボンベが見えます。蒸気鉄道の機関区では、ボイラーやフレームを吊り上げる巨大なクレーンや、ある程度の部品を鍛造する鍛冶屋、車輪のタイヤを削る巨大な旋盤など、大規模な鉄工所の設備を持っていました。機関士から不具合の報告があれば、このように分解整備し、いつも最良の状態で運用出来るように努めていたのです。

C11の隣では磐越西線のD51を整備しています。

整備係が集中して点検作業。機関車の本体だけで注油箇所が200箇所以上という、手間暇のかかる蒸気機関車。注油ポンプは装備されているものの、ロッドのクランクピンには油壺が付いているだけという、まさに剥き出しのエンジンが蒸気機関車です。無事に機関庫へ戻って来ても予防的な点検は欠かせませんでした。

ラウンドハウスにはD51、C57も休んでいます。只見線、滝の原線、日中線と会津地方をカバーしたC11、郡山から新津まで磐越西線福島県から新潟県までをカバーしたD51、C57と、会津若松機関区は広いエリアの輸送拠点、動力源だったのです。

煤けて油染みてはいますが、ゴミひとつ無いラウンドハウス周り、まさに機関車を扱う機械工場です。ターンテーブルの端には小さな運転席が付いていて中には電車のノッチのようなコントローラーが入っていました。ラウンドハウスの屋根に突き出した巨大な煙突は蒸気機関車健在の象徴です。

磐越西線の軽列車に活躍したC58の脇に置かれたグリスポンプ。使い込まれた工具類も磨かれて鈍い光を放っています。走らせるのも整備するのも手間暇のかかる蒸気機関車の基地、会津若松機関区、全盛期には鉄道職員と家族だけで五千人程が会津若松に暮らしたと思われます。大きな役割を担った鉄道一家の大世帯、蒸気鉄道時代には鉄道の町が確かにいくつもあったのでした。

C11の寝蔵、会津若松機関区、

 写真撮影・提供  加藤 潤 横浜市