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宗谷本線の冬 C55

凍てつく鉄路を踏みしめて、道北の輸送を支えた蒸気鉄道の姿を御覧ください。

停車中のC55。駅がもはや雪原になっています。機関車のデフレクターの支柱の上にツララ切りが取付けられ、いかにも寒冷地仕様の出で立ち、テンダーが高い流線型改造なのが分かります。機関車の脇には機関車別の停止位置表示が、高い位置に建てられており、降雪に備えています。右の線路は貨物用の側線ですがキチンと除雪され、厳冬期にも貨物の積み下ろしが行われていました。 電柱の脇を歩く駅員は通票閉塞のタブレットを機関車まで届け、駅舎に戻るところです。

見事に停止位置表示に合わせて停車しています。乗客の乗り降りの便利さや、小荷物の積み下ろし場所に荷物車をピタリと停める為に停止位置表示の設置は大切でした。

除雪した雪が積み上がると停止位置表示の設置もたいへんな作業になります。除雪車が削った後の僅かなスペースに置かれています。乗客がスチーム暖房の効いた車内で暖をとっている間も、鉄道員たちは状況に応じた工夫を凝らし、列車の運行を支え続けました。

テンダーと客車の連結面にスチームが立ちのぼっています。北海道の客車は2重窓の寒冷地仕様で、スチームさえ効いていれば、真冬でも暖かく旅が出来ました。

連結器の下の細いホースはブレーキ用のエアーホース、その下の太いホースがスチーム暖房用のホースです。蒸気機関車のスチームは10気圧以上の高圧蒸気ですから、こうしてあちこちからスチームが洩れ、冬景色に生命の温もりを感じさせる光景が生まれていました。

雪晴れの眩しさを遮る為に日除けの降ろされた客車。北海道仕様のスハフ32は2重窓の他に、発電機を床下で車輪のシャフトからのベルト駆動で回すのではなく、車輪のシャフト先端からギアで駆動する発電機を寒冷地向けとして装備していました。

発車に向けてブロワーを効かせ、ボイラーの圧力を上げるC55の頼もしい姿です。蒸気機関車は走行時は、動力源であるシリンダーからの排気を煙突下のブラストノズルから噴射してボイラーを通風し、火室の石炭へ空気を吸引しますが、停車中はシリンダーからの排気はありませんから、燃焼専用のスチーム配管であるブロワー管にスチームを送って通風していました。下り勾配などでシリンダーにスチームを送らない場合も排気によるボイラーの通風は出来ないので、燃焼に応じたブロワーの調整で良好な燃焼を維持しました。

列車の安全を確認し、発車の合図を送るべくプラットフォームに立つ駅長です。駅の業務は多岐にわたり、駅員も多く、当時の駅は町の生活に直結していたので、駅長は町の名士でもありました。温厚な紳士で、思いやりのある方が多かったと記憶しております。

雪原をひた走り、駅に進入する9600牽引の貨物列車。石炭をはじめ、木材、チップ、農産物など、様々な貨物を、セキ、トラ、チキ、ワムなど多様な貨車に積み込んで北の大地を走りました。広大な駅の構内の線路配置は、長い列車を列車交換し入換するのに必要なスペースでした。蒸気機関車が主役だった時代の鉄道の仕組みは文明遺産として、施設全体に価値があると思えます。

駅に留置されたバラスト積みのホッパー車。

多くの線路を維持するため、ホキと呼ばれる専用車両も使用されていました。このホキはレールを避けて、線路の道床全体に砂利を敷く事ができます。

広大な駅構内。

 

  撮影・写真提供  加藤 潤  横浜市