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津川界隈・ばんえつ物語号・C57

磐越西線で動態保存されたC57型は、現役時代とはかけ離れた飾り付けで、これまた現役時代の殺気だった爆走とは違い、観光列車を引いてノンビリと走っていたのでした。車齢や安全管理面からは当然ですが、獰猛ささえ感じさせたC57の変貌ぶりにビックリしたのを思い出します。

津川駅でファンに囲まれるC57。たいへんな人気です。 無煙化によって蒸気機関車が全廃になる寸前まで、旅客列車を牽引していた高性能機でしたが、そのエネルギーの源である高温高圧ボイラーは、現在の安全基準を満たしておらず、ボイラーが傷んでも新製ボイラーへの交換は出来ません。だましだまし使用しての観光列車牽引が、1日でも長く続くように祈っております。

津川駅では長い停車時間を利用して、石炭の掻き寄せ作業が行われていました。石炭焚き蒸気機関車のかぐわしい匂いが立ち込めて、素晴らしい時間が過ごせました。

異常な箇所は無いか?発熱はしていないか?、入念な点検も行われます。蒸気機関車の営業運転は、たいへんな手間暇のかかる仕事ですから、週末の観光列車運行だけに限られるとはいえ、運転を決定したJRの方々には感謝しかありません。 放熱管がランボード下に取り付けられたC57第3次型の特徴がよく分かります。

力感が溢れるメインロッド。 係の方の点検が続きます。加減リンクのシャフトから斜め上に伸びる細い棒は、オイルポンプの駆動ロッドです。 オイルポンプからの配管でオイルを送れない箇所には、独立した油壺が取り付けられており、油壺への注油も大切な作業です。 手間暇がかかるとはいえ、蒸気機関車は使用する全ての機器のエネルギーを、ボイラーから発するスチームで賄う為、水と石炭と人材が揃えば、何処へでも走れる頼もしい機関車です。

新津駅に入線したばんえつ物語号。行く先々で記念撮影が行われる人気ぶりです。 かつての新津駅は信越本線のD51、磐越西線羽越本線のC57が出入りする拠点駅で、24時間、煙の絶えることがない大駅でした。貨物列車組成の操車場を有し、広大な構内のあちこちに留置された客車、貨車の屋根越しに、蒸気機関車が煙を上げていた当時をしのばせるものは、ガランとした広いスペースだけです。

ばんえつ物語号が発車したあとは、訪れる人もなく閑散とした津川駅磐越西線蒸気機関車で営業していた頃は、地域の輸送拠点として賑わっていた事でしょう。

紅葉の頃、ばんえつ物語号は夕闇の中を新津へと帰って行きました。発電機から吹き出すスチームが闇に白くなびきます。

新コロナの規制緩和と海外からの旅行者で、紅葉狩りの名所は各地とも賑わっていますが、遠く福島県いわき市からの磐越東線郡山市会津若松市新潟県を連絡していた磐越西線は、C57が長編成の客車列車を引き、D51が貨物列車に奮闘する大幹線でした。ばんえつ物語号を楽しみながら、全国に広がっていた鉄道輸送の体系も、思い起こしていただければ幸いです。

 

 撮影・写真提供 加藤 潤 横浜市