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八王子機関区のD51とC58

早くから電化されていた中央線ですが、八王子には八高線蒸気機関車の機関区がありました。

D51のクロスヘッド。シリンダーの押し引きの力を動輪のクランクに伝えるメインロッドとをつなぐ重要な部品がクロスヘッドです。クロスヘッドだけでも2つの油壺が付いています。クロスヘッドの右にはシリンダーへのスチームをコントロールするバルブを駆動する合併テコが縦に付き、これらの関節部分への注油も、蒸気機関車を走らせるには重要なメンテナンス作業でした。

石炭の積込み作業中のD51。八王子機関区には石炭をホッパーで落とす給炭槽や給炭用のクレーン設備は無く、コンベヤーもしくは人力で石炭を積込んでいました。石炭の粉を固めた豆炭も使われて、機関助士がこぼした豆炭が線路際に転がっていました。

巨大な水タンクと給炭台。手前には石炭灰が集められています。そろそろいっぱいなので、近々トラに積まれて運ばれるのでしょう。こうした給炭設備への石炭の輸送には無蓋車のトラが使われていました。

給炭台の端には給水塔が立っています。この給水塔は布製のホースをテンダーの給水口に引込み、ザブザブとホースで給水する仕様です。石炭粉の飛散を防ぐ為に、石炭の山にも散水が行われています。給水タンクのポンプ小屋の前の囲いは、蒸気機関車から落とされた石炭灰の置き場です。

 

給炭台近くの側線に留置されたトラ。 機関区には架線が張られていないのは、この機関区の無煙化ディーゼル機関車が使われるからです。DD51とDE10は全国に普及したディーゼル機関車でした。

給炭台脇の側線にトラを押し込んだC58。 C58は横浜線八高線の軽貨物列車を牽引した他、八王子駅構内の入換にも使われました。動輪3軸に先輪、従輪付という軸配置は曲線とポイントだらけで、なおかつレールも細い駅構内を走り回るにはうってつけの機関車でした。

架線の下をバック運転で急ぐC58。

ホッパー車を連ねた八高線の貨物列車を引いて八王子駅に進入するC58。

 石灰石積みのホッパー車に続いてセメント専用のホッパー車が連結されています。八高線は高崎から八王子までの連絡線と言う役割の他に秩父からの石灰石とセメントを輸送する路線でした。

テンダーにうず高く積まれた石炭の山がC58の活躍ぶりを物語ります。C58こそが大正の名機8620の発展継承型と言えます。全国各地でのC58の活躍は、8620の万能機としての普及に重なります。

 

架線が張られて、 肩身の狭い蒸気機関車。給炭台周りだけは架線が無いのが、救いでしょうか。蒸気機関車の末期には、ありふれた光景でした。

D51は入換に使わず、バック運転での単機回送や後部補機の仕業もしないため、機関車の前に標識灯はありません。給炭台前の線路は石炭灰に埋もれています。

 本線を無煙化で追われてからも、重い貨物列車の走る線区で走り続けたD51。単一形式で生産数が千両を超えた機関車は日本ではD51だけです。その量産の記録は、これからも破られることはありません。

 撮影・写真提供 加藤 潤 横浜市