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汽車の駅、点描

汽車の駅には蒸気機関車のための設備の他にも、様々な特徴がありました。

 

駅に進入するC55。デフレクターの右に見えるのは、小荷物を載せた台車を収納する小屋です。つまり、この列車の後部にはマニかスハニあたりが連結されているのでしょう。汽車の駅は規模が大きく、用途別の建築があちこちに建っていたのでした。

9600の引く貨物列車の先頭は石炭専用のセラです。九州の石炭専用貨車はレールの間に石炭を落します。北海道はレールの両側でした。

 9600の背景にはテルハクレーンが線路を跨いでおり、小荷物の多いことが伝わります。側線も多く、左の建物の奥にも石炭専用貨車が留置されています。これらの貨車を入換する為には、側線の長さ分の引き上げ線が必要になるので、汽車の駅は、プラットフォームの長さの何倍もの規模でした。

 また、9600の右手の囲いは、蒸気機関車が落とす石炭の灰を溜めるスペースで、集められた石炭灰は、路盤の流失などの復旧工事に使われました。レールの脇にも石炭灰が積まれています。

プラットフォーム先端から、駅の端を見ると、駅の構内に一般の自動車が渡る踏切があります。広大な汽車の駅では、都会の電車専用の駅のように、プラットフォームだけで駅というわけではありません。列車はプラットフォームに着くはるか手前からポイントを渡り、車窓の外に増えていく側線を眺めてから漸くプラットフォームに滑り込むのでした。 このような駅では、貨車の入換が始まれば、踏切は開かずの踏切になり、蒸気機関車が誘導員の旗に従って右に左に走るのを眺めながら待つことになります。  また、長編成の列車では、列車の端の何両かはプラットフォームにかからず、線路脇に下ろされる事もありました。もちろん、地域の乗客は慣れていて、プラットフォームにかかる車両に乗車していたのでした。

駅の端近くに停車中のD50。ポイントには矢羽根付の標識と、転轍機が立ち、ポイントを切換える際には、構内員が転轍機にまで出向いてテコを扱いました。 出発信号機などは、駅舎付近のテコ扱い所か信号所から、ワイヤーで遠隔操作する腕木信号機が長く使われましたが、この写真では電気信号機に変えられています。真新しい電気信号機と矢羽根付の標識の新旧の対比が、時代の流れを感じさせます。

鉱石ホッパーを従えて駐機する9600。乗務員は機関車の前で何やら打合せ中です。構内を埋め尽くす側線と、9600の背景には、留置された貨車と、大規模な貨物上屋が見えます。煤けた跨線橋が示すのは、乗客も多く、貨物扱いも盛んな地域の物流拠点である駅の存在感です。

転車台で方向変換するD50。 左側の警戒色に塗られた施設は給炭台、奥の建物は構内員の詰め所かと思われます。 接続駅や、補機の駐機する汽車の駅には転車台は欠かせない設備でした。この写真からは転車台に引かれた動力の電線が良く分かります。 転車台は大規模な設備ですが、本線筋の分岐駅には上り下りの両端に設置されている事もありました。

交換列車を待つD50。有火回送なのか、 珍しい三重連です。列車ダイヤの混んだ路線では、補機に使用した機関車を戻す際に、単機回送で送らずに、列車に付けて戻す事もありました。突然、重連や補機付の列車が走って来て撮影時に慌てたのも懐かしい思い出になってしまいました。

 写真左の建物の近くに枕木で組んだ柵があるところから、駅構内の敷地が線路ギリギリではなく、余裕をとっているのが分かります。

駅付近の民間の建物には、様々な広告看板が取付けられ、駅構内の風景に雑然とした賑わいを与えていました。    

テンダーの上で石炭を掻き寄せる構内員。 駅で停車する間に、蒸気機関車は様々な作業を行いました。給水と共に石炭の掻き寄せも頻繁に見られた作業でした。

 汽車の駅では、乗務員や駅員だけでなく、乗客も、荷主も、また積込の作業員も、混然とした活気がありました。出札窓口でスタンプの押された切符を受け取り、改札口で改札係にハサミを入れてもらうといった、人が頼りの鉄道営業でしたが、それでも汽車は定時に走っていたのでした。

 撮影・写真提供  加藤 潤 横浜市