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只見線と室蘭本線

山中のローカル線が生き残り、北海道のかつての大動脈が廃線の危機にあります。

 

深い谷をトラス橋で渡り山あいを更に奥へと進むC11。

新潟県小出まで延伸し、県境の分水嶺をトンネルで抜ける事で、豪雪地帯である地域の冬の足として存続の価値を見出した只見線

 秋口には日本有数の紅葉の名所として、全国どころか、世界から観光客を集め、廃線の危機を乗り越えられそうなのは嬉しく思います。

D51が飼料用のホッパー車を連ねて力走する室蘭本線千歳線との合流点である沼ノ端駅も近い。

 ローカル線ながら、存続の為の要件を集める只見線に対して、室蘭本線岩見沢から沼ノ端までの通しの貨物列車は1日に1本だけになり、沼ノ端駅までが無人駅となって、輸送手段としては只見線より遥かに充実した設備を持っていたにも関わらず、命運が尽きようとしています。

沼ノ端駅から札幌へ向かう千歳線のD51。

 室蘭本線の存続は、廃止した場合に拠点間の貨物輸送を代行する千歳線の輸送密度が高過ぎるので、代行が難しいという一点にかかっています。

岩見沢へ向かって疾走するC57。幹線規格の整った室蘭本線の鉄路はC57のような高速機関車が高性能を発揮するのに最適なステージでした。

 室蘭本線沿線の好スキー場夕張マウントレースイには、営業を休止した立派なホテルがあり、台湾資本が入って営業を再開するようですが、北海道そのものが札幌一極集中ですから、千歳→札幌→夕張の乗客の流れが、室蘭本線の乗車率アップに貢献することは難しいです。

 撮影・写真提供 横溝 眞一 横浜市

会津川口駅で対向する列車を待つC11。霙の中、駅長は機関士と情報交換中です。C11の次位にはオハユニが連結され、郵便から小荷物、乗客と輸送の全てを蒸気鉄道が担っていた時代が伺えます。このC11型は15年間に渡り生産された短距離用機関車の後期型で、写真の機関車は水タンクと石炭の積込量を強化した戦時型の装備改造車です。

岩見沢に向うD51牽引の小貨物列車。無煙化が近づいた頃には、すでに北海道の石炭産業は下火になり、中小炭鉱は閉山が相次いで、室蘭本線の輸送密度も下がり始めていました。地域の基幹産業が国策や時代の流れで衰退する場合に、地域任せで、全国の中での地方都市の継続性を、長期的なスパンで構想しないのであれば、政府の仕事は随分とお気楽であるな、と思います。エネルギー効率に優れた鉄道輸送を、分割民営化だからJRに任せたとしているのは、単なる無責任です。

谷を渡るC11。長いスパンはトラス橋で、短いスパンにはデッキガーダーが使われている鉄橋の構成がよく分かります‥

 今、温暖化で世界が干ばつと森林火災、洪水に見舞われている状況で、温帯モンスーンの日本は気候的にまだ恵まれた環境と言えます。日本は金があるから食料輸入、観光で外貨獲得!では国際的な立ち位置が違います。飢餓に苦しむ国々に、北海道で食料を大増産して人道援助は現物支給でも良いのでは? アメリカの穀物メジャーの顔色をうかがっているうちに、全てが手遅れになっていく日本を室蘭本線はじっと見つめているようです。

特記を除き撮影写真提供 加藤 潤 横浜市