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C58の行くところ・陸羽東線

D51の爆発的ハイパワーや、C57のような暴力的なハイスピードを出すわけでもない中型万能機C58。陸羽東線の小牛田↔新庄間、約100キロの旅路には、すっかり馴染んで活躍を続けていました。

刈取りの終わった田んぼを行くC58。穏やかな景色の中を惰行運転で軽やかに進みます。

 大正の名機と呼ばれた8620型、8620型を区間列車用にタンク機関車としたC11、8620の近代化強化型の決定版、C58型。軸重の重さから、早期に入換用となり、営業線区での活躍が少なかった、8620の後継機種C50を除いても、日本の中型万能機と呼ばれた機関車は、合計1400両あまり、山が多く勾配線に強い言われたD50、D51の合計数に匹敵します。 このように、万能型中型機のグループも、全国の支線での活躍を考えると、日本を代表する蒸気機関車群のひとつでした。

ワフを従えて、貨物列車に力闘するC58。4軸のテンダーは、積載量もタップリで陸羽東線100キロの道のりには頼もしい装備です。 特に石炭は、水のように停車駅で容易に補給出来ませんから、この機関車ではキャブ側の側板に増炭囲いを付け、石炭をてんこ盛りに積んでいます。テンダー前方に集中的に石炭を積み込むのは、石炭消費に伴う、テンダー上での掻き寄せ作業を軽減するためでもあります。

客車列車の先頭に立ち、発車まで待機するC58の重連。 奥羽本線の福島↔山形間が事故不通となると、陸羽東線奥羽本線の上野↔青森間の急行列車の迂回路となりましたから、C58重連に急行津軽なら客車と荷物車を合わせて13両前後、列車全体では300メートルを超える長編成が、単線ですから列車交換しながら走りました。陸羽東線の駅には、それだけの広大な線路配置があり、それはそのまま、陸羽東線の輸送量の多さの反映でもありました。

着いた着いた〜、と笑顔が弾ける汽車の旅です。鉄道を公共輸送機関と考えた時、マイカーブームだから鉄道を切り捨てると言うのは、公共輸送サービスを止めて、移動手段は自己責任でと言うに等しいのです。挙げ句には税金を取りやすい自家用車やガソリンには課税して、日本政府は国家として、国土全体、国民全体への輸送体制構築責任を果たす職責を放棄しています。 首都圏集中によって国民の住環境は悪化し、せっせと働き納税する給与所得者は満員電車に詰め込まれる、こんな馬鹿馬鹿しい社会構造は、温暖化を契機に、直ぐに改めるべきです。

新庄へ、山形県へと重連で荷を運ぶC58。奥羽山脈の山肌にブラストを轟かせて進みます。

 秋田県山形県は、冬になると道路の除雪作業がたいへんで、地方財政を圧迫すると言われます。温暖化によって日本海の水温が上がり、寒波が来るたびに記録的な大雪に見舞われるからです。ただ、自己責任のマイカー通勤や、長距離トラック輸送を是とするうちは、除雪は延々と続きます。 化石燃料の使用を止め、エネルギー消費そのものを削減しなくてはならない温暖化対策の中で、職住一致の促進や、エネルギー効率の良い鉄道輸送を組合せての、雪国には雪国の地方再生が推進されるべきです。

 

貨物側線に貨車が留置された汽車の駅。入換を終えたC58が待避線で休んでいます。車扱い貨物の歴史は、そのまま、鉄道の歴史でもありました。 ジャストインタイムで荷主の便利性ばかりが求められた結果、サービスエリアは時間待ちトラックで溢れ、月に数日しか自宅に帰れないトラックドライバーの負担の上に、定時配送サービスが成り立っていることも、見過ごす事は出来ません。

広い構内から長編成の貨物列車を引き出すC58。軸重が軽い為に重量列車の発車時は苦労しますが、走り出せば、C57型の高温高圧ボイラー技術を踏襲した16気圧ボイラーに物を言わせて走り抜く機関車でした。

保線用の砂利敷き専用車、ホキを組込んだ貨物列車を引くC58。蒸気機関車と言えば煤が付き物でしたが、高質炭を使えば、これほどの噴煙は出ません。日本では高質炭は製鉄用に回され、鉄道輸送用はもっぱら低質炭が使われ、その使い分けは蒸気機関車の全廃まで続いたのでした。

 

 撮影・写真提供  加藤 潤 横浜市