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蒸気鉄道の魅力・雪と戦う

今も鉄道は除雪作業をして運行を確保していますが、蒸気機関車時代の鉄道は沿線地域をつなぐ唯一の輸送手段でしたから、豪雪と戦い列車を運行する取り組みは鉄道関係者の総力を上げた戦いとなりました。

 南岸低気圧の豪雪の後、遅れに遅れた列車を従えて矢立峠に挑むC61。谷間狭しと噴煙を吹き上げ、排気音を雪山に轟かせて走る姿には、電化による廃車が間近に迫った悲哀は欠片もありません。撒き砂とドレンを線路に叩きつけ、生命尽きるまで輸送に励んだ姿は忘れられない鉄路の歴史です。

降雪は峠の後押し補機にとっても厄介なものでした。D51型は幹線の峠越えにあちこちで使われた機関車ですが、石炭を焚べる機関助士の足場は機関車のキャブとテンダーの間に渡した鉄の渡板であり、幌などで風雪をしのぐ工夫はされていたものの、雪と寒気は容赦なくキャブに侵入して乗務員を苦しめました。

D51のスノウプラウから下がる氷柱が季節の厳しさを物語ります。 南岸低気圧の湿った雪はスノウプラウにまとわりつき、登り勾配に挑む機関車にとっては辛い抵抗となりました。 積雪が増えれば、線路脇はプラウがかき寄せた雪の壁となって、更に列車の運行を妨げたのでした。 雪の予想と除雪の状態を突き合わせ、列車ダイヤの何処にラッセルを組み込むか? 蒸気鉄道の運行は緊張の連続でもあったのです。

側線に休むラッセル車も雪にまみれて、除雪作業の厳しさを感じさせます。 ラッセル車は左右のウイングを屋根に積んだエアータンクの圧縮空気によって動かし、線路上の除雪幅を調整しました。一面の雪景色の中で位置を知る術は僅かに設置された信号機と、乗務員や作業者の経験でした。駅のプラットフォームなどの障害物があれば、ラッセル車のウイングは畳ざるを得ないので、駅構内などの排雪の多くは鉄道員の人力が頼りでした。降雪の無い地域から、多くの鉄道員が応援に駆けつけ、豪雪の中の列車運行を助けていたのです。

除雪用モーターカーを猛然と押し噴煙を吹き上げるD51。自走出来て便利な除雪用モーターカーも重たい雪や、降雪状況によっては力不足となり、D51の後押しの力を借りて運行されました。 幹線とは言っても多くが単線で、駅や信号場を使って上り下りの列車が行き交っていた蒸気鉄道では、1本のラッセルを通すにも何処で列車交換させるかの運行計画の緻密な変更が必要でした。その上、ラッセルが雪に刺さってはたいへんな運転事故となりますから、モーターカーを押すD51にも力が入っています。

雪の峠では、スチームを最大限使いたい機関士と乗客の為に暖房を効かせたい車掌とが言い争う事もありました。豪雪ともなれば、遅れを取り戻したい機関士と遅れに苛立つ乗客と対峙する車掌との立場は真逆です。そんな時頼もしいのは軽々と客車を押すD51の後部補機です。  

D51が多く行き来した峠の駅、プラットフォームは乗客がなんとか通れる程度には雪掻きされています。地域輸送を維持するために奮戦した蒸気機関車鉄道員の熱い思いに溢れた雪との戦いは、その過酷さ故に、たいへん尊く美しい鉄道情景に思えるのです。

 撮影と写真提供 加藤 潤 横浜市